我が「中つ国」駐在所には、キャンドルが2つある。
それも、使用済みのが2つ。
前の住人の置き土産である。
前の住人はI国籍の方だとうかがっている。
きっと、お国柄「ロマンチック」な方なのだろうなと思った。
私は夜間、駐在所内で執務をしていた。
本日、我が国の出先機関に赴き邦人援護活動のお話をしてきた報告書を作成していた。
前回も書き記したがこの国の規制はかなり厳しい。
インターネットやEメールの環境も同じである。
通信が遅い、イライラするくらい遅いのである。
かなりのフィルタリングをしているのでしょう。
電子メール受信もかなりの確率で途中でダウンする。
どうにかこうにか、安定するように工夫をした。
それでも、我が国で通信環境を享受していた習慣で、
とても、遅く感じるのである。
「ああ、やっぱり光だな・・・」と感じる。
と、その時!
突然、室内が真っ暗になった。
「停電予報はなかったはずだ!」
「テロか?テロが起きたのか?」
真っ暗な室内をおもむろに手探りで移動し、
携帯電話の明かりで窓に近づいた。
昔、停電の時にお隣さんの状態を確認した。
同じように確認をする。
「あれ?明かりがついてる・・・」
でも、非常灯かもしれない。
やはり手探りで玄関へと向かう。
ドアを開けると廊下の電気がついている。
ひょっとして、この部屋のブレーカーが落ちたのか?
携帯電話の明かりを手にブレーカー・ボックスがある場所に行く。
ブレーカーも落ちてない?
訳がわからないのでちょうど戻ってきた部下に命じて、
階下の管理サービスセンターへ確認をさせに行かせる。
携帯電話は唯一の通信アイテムである。
むやみに放電できない。
「フッ」と気がつく。
そう言えば、キャンドルがあったな?
携帯電話の明かりを頼りにキャンドルを探す。
「あった!」
思わず声が出てしまう。
暗闇の中でだ。
キャンドルに灯をともす。
キャンドルの色は赤である。
その明りに照らし出されて、室内が仄かに明るくなった。
そういえば、大昔に東京もよく停電があったな。
昔の家はろうそくを必ず常備していた。
停電になれば、ろうそくに灯をともし暫く通電するのを待っていたものだ。
幼少の頃が走馬灯のように甦ってくる。
そうして、しばらく感傷にひたっていた。
そうこうしていると、管理センターに行った部下が戻ってきた。
説明を聞いて驚いた。
電気代が不足して電気が止まったらしい?
「えっ?」
そう言えば、この「中つ国」では電気代は月極めではない。
銀行等で電気を必要な分だけ購入する。
購入した分を専用のICカードに充填して、
自分の部屋の電気メーターのスロットルにこのICカードを差し込み
電気メーターに充填する。
すなわち、電気メーターの購入電気分のデポジットが「0」になったのが停電の原因なのだ。
「この前、充填したから大丈夫だと聞いていたんですが・・・」部下が言う。
「今充填してきたから、もうすぐ電気つきますよ」部下が言う。
キャンドル・ライトの揺らめく炎をじっと見つめ、電気がつくまでただ待つ。
待つこと5分、目の前が「パッ」明るくなった。
すべては機能をし始めた。
「この国」の電気は問答無用だなと思った。
さすが「中つ国」、冒険だらけだ。
でも、テロ等ではなくてよかった。
そして、キャンドルを吹き消すときにこの置き土産の意味が初めてわかった。
特殊出入国管理局長